#30 2022年の Louis Cole その2―ライヴを観た

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12月8日 ルイス・コールの追加公演を妻、息子と3人で観に行きました。

みなさん師走はお忙しいと思いますが、それは僕の仕事も同様です。制作も重なりライヴも近い時期なのは分かっていましたが、ルイス・コールは観ておかなければ後悔するだろうと思い、追加公演に申し込み無事当選したというわけです。


ちなみに僕はあまりライヴに行きません。この10年くらいでは2015年のディアンジェロ @ Zepp Tokyo 、15か16年のハイエイタス・カイヨーテ @Bluenote Tokyo、17年のエリカ・バドゥ @ビルボード・ライヴ・東京(DR、ブラックダイナマイト=マイク・ミッチェルだったんだぜ)、19年のジョージア・アン・マルドロウ@Bluenote Tokyo だけですかね。自分も出演するフェスでハイエイタス・カイヨーテとロナルド・ブルナー・jr 擁するチャカ・カーンが出演していたので観れたのはラッキーでしたが、それを入れてもこんなものです。出不精極まりない。

ところが、ハイエイタスのときもエリカのときもそうだったんだけど”これは是が非でも観ておかなければ自分にとって大きな損失になる”と思うことがホンのたまにあって、そういう時はいかなるスケジュールであってもライヴに行くことにしています。ルイスもそうでした。


以前のルイス特集でも書きましたが、彼は現代ポップ・ミュージックのコンポーザーとして最高峰に位置していると思っています。ルイスのドラムもステージングも MV も大好きですけど、ポップソングライターとしての才能というか、曲がとても良いですよね。


ポップ・ソングというからにはマス=大衆の耳、他者の耳を無視しない、意識するのは当然で、その特性からポップ・ソング = ビジネス≠芸術とみなされる場合もあります(といっても古典の時代から他者を意識しない芸術作品は皆無に近いです)。まさにビジネスの種としてのみ音楽を作っているチームも存在しますしね。しかし、ソングライター、音楽家側から見ていると、そこまでシンプルに割り切ってポップ・ソングを作っている人はそんなに多くないだろうと感じます。

人それぞれさまざまなルーツや経験から表現したいものが形作られ、続けるうちに熟成されるわけですが、その表現を深め、突き詰めていく中で、求める表現の中でも何がコアなのかが段々と解ってきます。そしてそのコア部分をより多くのリスナーに伝え、共有するにはいかなる工夫が必要なのか、どんな方法があるのか、みたいな視点も持てるようにもなります―ここではあくまでも音楽的な工夫を指します―目的は、コア部分を深く、正確に、より多くの人と共有できるようにするため、といったところです。

ところがさまざまな理由によりその順番が逆になってしまっている音楽も多く耳にします。より多くにアピールすることが第一議となって、作家自身、制作者がコア部分を見失っているパターンです。僕も含めて多くの音楽愛好家はそういった作品に魅力を感じないでしょう。ここでいう”優れたポップ・ソング”とは”自身のコア表現と他者への訴求に関する工夫のバランス”が取れている、絶妙なものを指しています。そして、音楽的に優れたソングライターは貪欲に工夫を重ねながらも本能のようにコア部分を守り抜きます。いや、努力してコアを守るというよりも、何があろうが揺るがない強固なコアを持っている音楽家が、創意工夫を怠らずに創作したもののみが優れたポップ・ソングになりうる、といった方が的確ですね。もちろんルイス・コールの音楽もそうです。


さて、会場は神田スクエアホールで18時会場、19時開演です。住居から神田はそれほど近くはないので余裕を待って16時過ぎくらいに妻と車で出発、学校帰りの息子とは神田駅で待ち合わせです。チケット購入時には”オールスタンディングなので、息子は整理番号なりの前方位置で観戦、僕ら夫婦は後方でのんびり観てようか”みたいなことを言ってたと思います。ところが会場入り口目の前の駐車場に車を停めた時間が会場時間ピッタリだったこともあり、急に”やっぱり整理番号なりの良い環境で観たいな~”と思いました。その旨を家族に伝えて了承を得たので、夫婦は開演までお茶でも~みたいな計画は変更、3人でそそくさと会場に入りました。OA としてジェネヴィーヴ・アルターディ(Knower の VO でLouis にもコーラスで参加)のステージも予定されていたので、もしかしたら長丁場かもと思ってはいましたが、もうそんなの関係ありません。

たぶん18時15分くらいには案内され、僕ら3人は5~6列目くらいのドセンターをキープしました。そういえば、オールスタンディングはディアンジェロ以来、家族での参戦は初めてでした。僕はドリンク(ジンジャーエール)を早々に飲み干し、家族ともちょこちょこ会話をしながらスマホ見たりして時間を潰しました。たびたび時間を気にすると経過を遅く感じてしまうので時計はほとんど見なかったです。BGM はずっとKnower でした(ちなみに息子は Overtime しか知りません)。19時ちょいすぎでしょうか、ジェネヴィーヴ がコーラス二人を引き連れて登場しました。45分くらい待っていたので会場も大盛り上がりです。おーやっと開演だ!なるほどPC からトラック出しつつ、3人歌唱、一人はキーボードも弾くパターン & 背後のスクリーンには PC から映像というフォーマットで OA が始まりました。

ステージ上には3人、ジェネヴィーヴはキーボード前にはいなかったといえ、バンドセットではないことを踏まえ、曲調はもっとアッパーからスタートしたことは差し引いてもらって、こんな感じが近いでしょうか↓


●Genevieve Artadi - Change Stays [Live in Brasilia oct 10 2018]



ベッドルームからの配信だけど、サウンドはこんな感じが近いかな↓


Genevieve Artadi - Racecar Bed Live Mini-Set




最近はジェネヴィーヴもブレインフィーダーからリリースをしています。エレクトロ・ニューウェーヴ感が強く、そしてかなり現音ぽい時間も長いです。


日本ロケーションの MV 流しながらこの曲も演ってました↓


●Genevieve Artadi - 'Godzillaaaa (feat. Real Bad Man)' (Official Video)



この曲演ってたかは忘れたけど、こんなサウンドが多かったかな↓


●Genevieve Artadi - 'Hot Mess' (Official Video)



ジェネヴィーヴは非常に巧いヴォーカリストでスタンダードもブラジルものも正統に歌うんだけど、自身の音楽ではジャズっぽい場面はほとんどなく、それでも和声はダイアトニックではないので、そこが”現音っぽい”と言った所以です。もっとも近いのはカンタベリー一派かな、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースとかナショナル・ヘルスとか。それのエレクトロ版って感じ↓


●Hatfield And The North - Lything / Big Jobs 2 / Going Up / Lobster / Gigantic Land-Crabs - Live 1973



●National Health • The Collapso • OGWT 1979



そしてジェネヴェーヴは南米出身で活躍している人脈と深いつながりがあるようで、以前も紹介しましたがギターのペドロ・マルティンズともよく演っています↓


●Genevieve Artadi & Pedro Martins - For Us



●Pedro Martins | Genevieve Artadi | Spider's Egg | SWR NEWJazz Meeting | SWR Classic



これも紹介済みですが、マルティンズはルイス・コールのステージに参加する時もあります↓


●Louis Cole - Groundup 2022 - Live set



49:03 overtime でソロを演っています。


そして、マルティンズを持ち出すまでもなく、今回のルイスのコーラス、後の二人もソロ・アーティストとして活躍しています。このフロント・センターにいる3人ね↓


●"Let It Happen / Park Your Car On My Face" - Louis Cole Big Band (Live at The Troubadour)



短髪で鍵盤も弾くチキータマジック↓


●Keep Me Fresh live w Louis Cole - chiquitamagic



が実はイシス・ヒラルドだった!!

これは知りませんでした。

コロンビア出身でカナダで活動中とプロフにあったけど、今の活動地は北米かもしれない。

柳樂光隆さんのツイートで初めて知った次第↓


https://twitter.com/Elis_ragiNa/status/1600850868970344449?cxt=HHwWgsDS9cbYrrcsAAAA


イシス・ヒラルド名義だと↓


●Nos Acechan by Isis Giraldo Poetry Project



チキータマジック名義での新譜も予定されているそうで楽しみです。

そしてもう一人、Fuensanta Méndez もソロ・プロジェクトで精力的に活動しています。

彼女はメキシコ出身でベースを弾いて歌います(エスペランサ以降が育った結果なのか、最近多いですね)↓


●BIMHUIS TV Presents: FUENSANTA & ENSAMBLE GRANDE



●1. Cuándo te voy a decir (Fuensanta Méndez - Ensamble Grande)



ジェネヴィーヴも含めたこの3人、ポップ・ソングへの距離感がこれからどう変化していくのか、変化していかないのか、どちらにしろとても楽しみに思います。


で、ライヴの話。

ジェネヴィーヴは3人で40分弱演って転換というか、また20分強の休息。ジェネヴィーヴ中に斜め前方の方が酸欠か、体調不良かで倒れてしまい、周りの方がスタッフを呼ぶなど迅速な対応をしていた。本編前に倒れてしまってさぞ残念だったと思うが、お大事に。

ということで20時過ぎ、いよいよ客電が落ちてルイス公演スタート。YouTube で各地ステージを観ているので構成は大体わかっていたが、それでも楽しみにできるのが強度の高いポップ・ミュージックの証拠。ポップ・ソングの楽しみ方のひとつだと思います。そこに各演奏者のインプロがあり、内容はシリアスでも骸骨スーツで跳ね回る3人のコーラス隊がいるというエンタテインメント。こうしたステージングがコアな音楽ファン以外にもアピールしたポイントとも言えるでしょう。

観に行った前日のステージ・オープニング。チェキ以外は大体同じでした↓


●Louis Cole BIG BAND JAPAN TOUR 2022 12.07 WED Shibuya O-EAST



↑この日はキーボード & ドラムパートに入り損ねて止まった(4:09~/ルイスはしくじった部分をやり直す派閥のようで、YouTube でも3つはやり直してる動画を観ました)りしていますが、8日はやり直しありませんでした。ホーン・セクションは現地調達方式(パート譜があって書いてある音符を吹く/弾くのが中心の楽器は伝統的によくそうされます。ホーン・セクション、ストリングス・セクションなど)のようで日本人ホーン・セクションも素晴らしかったです。TOC バンドから安藤さん(merlaw)、武嶋さんが参加していました。

名古屋公演はオープニングで「U~~~P」と声を伸ばしている間にメンバーが登場する演出はありませんが、ほぼ全編アップされてますのでよければサーチしてご覧ください。その1だけあげときます↓


●20221205 #1 Louis Cole



僕がみた8日の追加公演ではオーディエンスはもちろん会場一杯でしたが、そこまでギュウギュウには詰めておらず、余裕を持って楽しむことができました。音響も悪くなかった。やはりセンターは良いですね。みんなマスクはしていたものの、声出しも OK で非常に盛り上がったライヴでした。


結局ダブル・アンコールも含め、終演は22時。会場から4時間ほど立ちっぱだったわけですが、いくら動いていても立ち位置は変えられないので、終演後、股関節が固まってしまった感じは初めての感覚でした。車に乗る頃には戻ってましたけど、あんな感じになるんすね、おっさんは。


ルイスはインタビューでJB やスティーヴィー、そしてスクリレックスの名前をよく出していたような気がしますが、彼の音楽のロマンティシズムの中心はビーチ・ボーイズというか、ブライアン・ウィルソンのそれなのだと再確認しました。スティーヴィーも結構ありましたけど。楽曲的なコアはそこにあって、リズムとして JB が、Knower に顕著だった音色と、ダイナミズムとしてスクリレックスがあるような感じ。そして広い範囲でのジャズ・フュージョンの影響ももちろん大きいと感じました。客席にベテラン・オーディエンスもちらほら見かけたのも頷けます。


とにかく最高に楽しみました。おまけとして最近アップされた新アル収録曲の MV を二連発で↓


●Dead Inside Shuffle - Louis Cole



park your car on my face - Louis cole



笑すごく良い。

7~8年前から”音楽は映像と組み合わさって初めて一つのパッケージと認識されるようになるだろう”と言っていましたが、まさにそんな感じ。ジャケ写(静止画)で音だけアップされているようなものはあまり回転しない。とにかく動画であることが重要で、リリックヴィデオもそういった対策のひとつでしょう。上記 MV 新作ふたつもまるきりホームヴィデオですが、内容が面白いので満点◯です。


ではまた次回!


冨田

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